分散ストレージとは
分散ストレージとは、必要なときに、必要な場所で、必要な人がデータにアクセスできるようにするソフトウェア定義のストレージシステムです。分散ストレージは、HA (高可用性)環境でスケールやデータアクセスを処理する目的で設計された論理ボリューム管理システムであり、障害やサイバー攻撃を検出して対応するインテリジェンスを備えています。従来型の 3 層アーキテクチャに代えて分散ファイルシステムを採用し、地理的に分散したストレージノードのクラスタにデータを保存します。ストレージシステムには、クラスタノード間でデータを同期し調整する機能が含まれています。
「分散型」は次世代のクラウドストレージとなり得るか?
分散クラウドストレージは、いくつかの点で従来型のクラウドストレージと共通点あり、特に使用する技術とハードウェアにおいてそれが顕著です。ただし、1 つ大きな違いがあります。分散クラウドストレージは、データセンター内のストレージデバイスの集合体に保存されたデータではなく、地理的に分散したストレージノードのクラスタに保存されたデータで構成されます。ストレージシステムには、クラスタノード間でデータを同期し調整する機能があり、ストレージの展開と管理が大幅に簡素化されます。データが分散されているため、サイバー攻撃の検出、防止、復旧、分析にはクラウドベースのデータ監視ツールを使用します。共有ストレージはランサムウェア攻撃の格好の標的となります。分散クラウドストレージのデータガバナンス機能は、シグネチャの検出、ユーザーセッションとエンドポイントのブロック、フォレンジック分析の実行に大きな効力を発揮し、また、攻撃された場合の復旧作業にも役立ちます。
このタイプのクラウドストレージの「分散型」という性質が大きな意味を持つのは、クラウドデータをリモートオフィス/ブランチオフィス(ROBO)のような、組織の物理的な場所の近くに保存できる点です。これにより、場所に依存するクラウドのユースケースに新たな可能性が生まれ、データ転送の高速化、ネットワークの混雑緩和、データ損失のリスクの低減を実現できます。
エッジコンピューティングとストレージを基盤とする分散クラウドストレージは、データを必要とされる場所のより近くに置くというクラウドストレージの次世代の姿を示しています。AWS などのパブリッククラウドプロバイダは、複数ゾーンやリージョンベースのサービスに見られるように、使用する場所の近くにデータを配置する価値を以前から認めています。
分散ストレージの仕組み
パブリッククラウドプロバイダは、ストレージサービスをさまざまな物理的場所に分散して提供しています。その目的は、使用する場所の近くにデータを物理的に保存することで、遅延を大幅に少なくすることです。
分散クラウドストレージでは、管理者が 1 つのコントロールプレーンで 3 種類全てのストレージのデータを一貫して管理できるためパブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドの境界は曖昧になるか、完全に意識されなくなります。
分散ストレージが重要な理由
- ソフトウェア定義:分散ストレージは、従来の集中型 SAN および NAS をソフトウェア定義のストレージプラットフォームに置き換える。それにより、お客様はデータセンター、ブランチオフィス、またはクラウド全体で単一の統合ストレージプラットフォームを導入、管理、拡張できるようになる。統合された分散ストレージプラットフォームは、ファイル、オブジェクト、ボリュームを複数のプロトコルにわたって全てのワークロードおよびユーザーに提供し、ストレージへのシームレスなアクセスを可能にする。
- 全てのプロトコルが利用可能:これまで、Files、Objects、Volumes ストレージサービスはポイントソリューションとして調達され、それぞれ独立したチームが管理していた。分散ストレージシステムは、3 種類のアクセスを 1 つのプラットフォームに統合してシステムのシンプル化を実現するほか、ストレージサービスのコア/エッジへの導入やクラウドへの拡張を支援する。さらに、3 種類のストレージサービスを一元的に管理および監視できる。
- スケールアウトアーキテクチャ:従来のストレージアレイとは異なり、分散ストレージは仕様上スケールアウトアーキテクチャを採用している。必要な数だけノードを追加し、ストレージ容量を無限に増やすことができる。
- プロビジョニングの高速化:分散ストレージシステムでは、多数の物理ノードからストレージリソースの共有プールが作成されるため、ストレージポリシーを作成し、仮想マシンにアタッチすることで、仮想マシンが動的ストレージプールのリソースを瞬時に利用できるようになる。これにより、管理者がボリュームやファイル共有を作成し、仮想マシンに手動でアタッチする必要があった従来のストレージとは異なり、ストレージのプロビジョニングが迅速化される。
- 管理と監視の簡素化:分散ストレージシステムではダッシュボード、データ分析ツールなどを使用して、管理と監視を簡素化できる。
分散ストレージの機能
クラウドストレージプロバイダごとに提供される機能は異なる場合がありますが、ほとんどの分散クラウドストレージシステムには以下の機能が含まれています。
- パーティショニング:クラスタノード間でデータを分散し、それらのノードからのデータに容易にアクセスできる。
- レプリケーション:データがさまざまなノードにコピーされ、変更されるたびに全てのノードが一様に更新される。
- 耐障害性:ノードの故障が複数にわたっても、引き続きデータを利用できる。
- 容易なスケーリング:システム運用者はクラスタにノードを追加または削除するだけで、必要に応じてストレージ容量を増減できる。
分散クラウドストレージのメリットとデメリット
分散クラウドストレージには、次のようなさまざまなメリットがあります。
- コンプライアンスを支援:国内にデータを保存することが簡単にできるようになり、秘密を要するデータの国外への移動を規制する法令の遵守が容易になった。
- 攻撃対象領域の曖昧化:「中央」サーバーが存在しないため、悪意のある攻撃者が狙う明確な攻撃対象領域が存在しない。
- ネットワーク障害のリスク軽減:データがローカルまたはリージョンのクラスタに格納されるため、必要に応じて別々に実行でき、耐障害性が向上する。
- プライバシーの強化:データファイルは分割され、暗号化されて、サーバーのネットワーク全体に分散して格納される。
- エネルギーコストの削減:大規模な集中型データセンターの構築と冷却が不要。
一方で、このクラウドストレージモデルには、分散型という性質を主因とする次のような課題があります。
- 帯域幅:さまざまな種類のクラウドストレージやシステムで構成される分散クラウドストレージには数多くの接続モデルがあり、エッジに配置されたインターネット接続に負担がかかる可能性がある。
- セキュリティ:さまざまな種類のクラウドストレージが世界中に分散しているため、保存されたデータの安全性の確保が困難である。
- データ保護:バックアップや事業継続性は、特に地理的に制限されたデータを、あるべき場所に保存しなければならない場合に複雑な問題を引き起こす可能性がある。
クラウドコンピューティングと分散クラウドの比較
現在普及している従来の集中型クラウドストレージシステムは、ほとんどの組織にとっては最適な選択肢です。これらのシステムがすぐになくなることはありません。
しかし、特にエッジコンピューティングや場所に特化したユースケースが増えるにつれて、分散クラウドストレージがますます普及することが予想されます。
集中型クラウドストレージでは多数のサーバーを配置したデータセンターが必要ですが、分散クラウドストレージでは分散型ネットワークを通じて個々のデバイスやコンピュータに広くデータを伝送します。その最大のメリットは信頼性です。データをストレージサーバーの 1 つの集合体ではなく、複数のシステムに保存することで、耐障害性が生まれ、データの損失を防ぐことができます。
また、分散クラウドストレージでは、使用される場所の近くにデータが保存されるため、遅延も低減できます。従来のクラウドモデルでは、データが国内または世界中を移動するため、深刻な遅延が発生する可能性があります。遅延が少ないほどパフォーマンスが向上し、全体的にユーザーエクスペリエンスも向上します。また、分散クラウドストレージは、より環境に優しいソリューションであり、エネルギーコストを大幅に節約できる点で、集中型モデルよりも優れています。巨大な冷却システムも、光と熱を必要とするデータセンターの建物も必要ありません。
さらに、分散クラウドストレージはデータセキュリティとデータ保護も強化します。1 つのデータインスタンスを複数のサイトに分割することや、複数のデータインスタンスを複数のサイトに複製することができます。いずれも、DR が必要な場合やランサムウェア攻撃などに備えたデータ保護の強化に役立ちます。
エッジコンピューティングと分散クラウドの比較
エッジコンピューティングとは、データをネットワークのエッジで処理する分散 IT アーキテクチャのことで、データはその発生元にできるだけ近い場所で処理されます。これは、コンピューティングとストレージがデータソースと同じ地点に置かれる理想的な構成です。分散クラウドコンピューティングは、複数のコンピュータ間で共有されるソフトウェアシステムですが、効率とパフォーマンスを向上させるために 1 つのシステムとして動作します。
分散クラウドストレージの例
分散クラウドストレージは Amazon S3 や Microsoft Azure Blob Storage など、よく知られたクラウドストレージシステムの基盤となっています。分散クラウドストレージのもう 1 つの代表例は、Netflix や YouTube などのコンテンツデリバリーネットワーク(CDN)です。これらの企業は動画コンテンツを、それぞれの視聴場所に近い世界の各地点に保存しています(中国で番組を視聴する人もいれば、イギリスで英語の動画にアクセスする人もいます)。これはレイテンシの低減に役立ちます。
分散ストレージと Nutanix
Nutanix ユニファイドストレージは、ファイル、オブジェクト、ブロックストレージを 1 つのプラットフォームに統合するソフトウェア定義のストレージプラットフォームです。専用のストレージシステムが不要になり、環境の運用が簡素化されるため、インフラではなくアプリケーションサービスにより集中できます。ユニファイドストレージは、Nutanix Cloud Platform と組み合わせることで、スケール、パフォーマンス、統合データセキュリティに優れたプラットフォームを提供します。コア、クラウド、エッジなど、その導入場所を問わず、最新のアプリケーションやサービスを構築するための俊敏性、柔軟性、簡便性を備えています。このプラットフォームは、S3、SMB、または NFS プロトコルにより、構造化データと非構造化データへのシームレスなアクセスを可能にします。全てのストレージリソースを単一の管理ポイントで管理することで、複数のインターフェースの錯綜が解消されます。さらに、消費者グレードの設計により、ストレージに精通していないユーザーでも日々のストレージ管理とデータ管理のほぼ全てが処理できます。ソリューションに組み込まれたデータセキュリティと分析により、データの使用実態についての詳細な知見が得られ、ランサムウェアやその他の悪意のある攻撃者からの脅威を防ぐのに役立ちます。統合されたランサムウェア保護機能により、ユニファイドストレージはサイバー攻撃の検出、防止、および攻撃からの回復を支援します。
関連リソース
あらゆるデータ管理ニーズに対応する業界初の統合ストレージプラットフォーム
Nutanix ユニファイドストレージを使用して、サイロ化したファイル、オブジェクト、ブロックストレージを単一プラットフォーム上で統合し、シームレスなアクセスと管理を可能にする最新の手法をご覧いただけます。
ファイルストレージによるストレージの変革
複雑なファイルストレージシステムを HCI でシンプルに。クラウドライクなデプロイメントとプロビジョニングが可能になります。レポートをダウンロードしてご覧ください。
ガートナーのマジック・クアドラント「分散ファイルシステム/オブジェクトストレージ」部門
2021 年版マジック・クアドラントのレポートでは、急激に進化する非構造化データストレージ市場におけるベンダーの評価を解説しています。無償でダウンロードできます。