ハイブリッド・マルチクラウドでのアプリケーションモビリティが重視される理由
執筆者:Nutanix, Inc. 製品オペレーション部門 VP Venugopal Pai
私は、世界中のお客さまと直接お会いすることに多くの時間を費やす Nutanix の「ロードウォリアー」として知られています。パンデミックの影響で 2 年間の中断がありましたが、ようやく再びお客さまと直接お会いできるようになりました。これは、クラウドやデジタルトランスフォーメーションに関連する取り組みや、ビジネスの俊敏性と競争力を高めるために直面している課題について学ぶ重要な機会です。
世界中の組織が直面している IT の優先事項と課題に関するお客さまの直接の声は貴重であり、それを皆さまと共有することが重要だと考えています。そのなかでも、まずは、クラウドとデジタルトランスフォーメーションのプロジェクトが持続可能なビジネスの優先事項リストの上位にある理由をいくつかご紹介します。
Nutanix がスポンサーを務めた 2022年2月の IDC Info 概要「Surviving and Thriving in a Multicloud World」では、エンタープライズワークロードの市場トレンドがパブリッククラウドとプライベートクラウドに移行し続けていることが調査データで明らかになっています。
今後 2 年間で非クラウドのワークロードが 4% 減少すると予想されており、組織はビジネスを改善する方法としてクラウドのメリットを活用しようとしています。これには、オンプレミス、ホステッドクラウド、パブリッククラウドへのワークロードの移行が含まれます。
ECI レポート
ワークロードをクラウドに移行するには、効果的なクラウド戦略が必要です。同様に重要なのは、グリーンイニシアチブとサステナビリティの目標を達成する能力です。つまり、プライベートクラウド、SaaS、およびパブリッククラウドの複数利用など、適切なクラウドを柔軟に選択できる効果的なハイブリッド戦略が必要です。
環境・社会・ガバナンス(ESG)による IT 変革の必要性がますます高まっており、特に欧州では役員会議で議論されています。世界のエネルギー市場に対する高まる圧力が推進力となっており、エネルギー使用量や二酸化炭素排出量を最小限に抑えたいお客さまにとって、差別化要因となり得ます。
お客さまがクラウドを導入する理由には、次のようなビジネス、財務、技術的な理由が挙げられます。
- データセンターの所有と運用からの脱却(または、少なくともその数を減らす)
- 充実したクラウドネイティブサービスの統合
- AI や機械学習サービスの統合(パブリッククラウドはスケーリングに適している)
- 財務モデルを CAPEX(資本的支出)ではなく OPEX(運用支出)にシフト
IT 部門にクラウドのオペレーティングモデルへの転換を迫るのは、純粋にトップダウンの政治的決定である場合もあります。この場合、ハイパースケーラーとの大規模な前払いのエンタープライズ契約の形をとることがあります。これは、IT サービスのための有効期限のある数百万ドル相当のギフトカードのようなものです。
このような状況では、ビジネスは既にパブリッククラウドにサインアップしており、時間は刻々と過ぎています。IT チームにとって、時間は非常に重要です。彼らは今、アプリケーションの計画と移行で脚光を浴びており、これらの投資から利益を最大化することが期待されています。しかし、その道のりは、当初考えていたよりもはるかに複雑になる可能性があります。
全ての IT トランスフォーメーションプロジェクトには、課題があります。しかし、アプリケーション移行に対して誤った決定を下したり、クラウドプロバイダのネイティブ API と過度に統合することは、柔軟性を損ない、ロックインが発生し、後で変更するのにコストがかかる可能性があります。
移行の複雑さは、クラウドへの移行を決定したときからはじまります。移行の具体的な理由を理解することは、組織が方針を検討する際に大きな影響を与えます。
パブリッククラウドをエンタープライズアプリケーションの IaaS(サービスとしてのインフラ)のように扱うには、リファクタリングや再設計の取り組みを推進するために、臨床評価的な査定や検証を組み合わせる必要があります。
課題は、各アプリケーション層におけるエンタープライズアプリケーションの依存関係、データフロー、必要な性能、耐障害性、データ保護の複雑さを理解することです。長期的には会社にとって有用ではなく、より多くのコストがかかってしまう場合もあります。
この種のアプリケーション再開発に比較的慣れていないお客さまにとっては、IT 管理者や開発チームも新しいスキルセット、ツールセット、プロセスが必要であること意味します。
幸いなことに、プロジェクトのリスク、期間、コストに影響を与える可能性のあるアプリケーション移行方法はいくつかあります。選択肢には、ワークロードの保持または廃止、新しい既製パッケージへの置き換え、ワークロードのリホスティング、リファクタリング、または再設計など多岐にわたります。
それぞれに独自のリスク、実装時間、関連するコストがあるため、組織にとって最適なものを選択することが重要です。
リファクタリングと再設計には、新しいアーキテクチャへの移行の可能性を含む、明確なレベルの再開発とコード修正が必要です。このプロセスには、アプリケーションごとに 6〜8 か月以上かかる場合があります。
最近、ある金融業界のお客さまから、1 つのアプリケーションのリファクタリングに 1 年かかり、さらに数百ものアプリケーションを移行する必要があったと伺いました。大規模なアプリケーションの再設計にかかる時間とコストは、多くの場合、経営陣が受け入れられるプロジェクトの期間と予算をはるかに超えることがあります。これらは全て重大なビジネスリスクに相当し、IT チームにとって大きな障壁となります。
再構築には、アプリケーションの完全な書き直しを含み、SaaS ベースのアプリケーションとして実施する可能性があります。また、再開発プロセスが必要になります。
アプリケーションのリホスティングには、アプリケーションのコードや機能を変更せずに、別のインフラに移行することが含まれます。
アプリケーションをパブリッククラウドに移行すると、エンタープライズのインフラとクラウドの根本的なアーキテクチャの違いが明らかになります。通常、エンタープライズアプリケーションはインフラの回復力を期待して記述されますが、クラウドネイティブのアプリケーションはインフラの障害を許容するように記述されています。重要なのは、スタックのどこで耐障害性を管理するかということです。
Nutanix は、お客さまがアプリケーションモビリティをシンプルかつスケーラブルにできるよう支援します。
Nutanix は、パブリッククラウドベンダーやサービスプロバイダと提携し、その環境を Nutanix が 10 年以上前から先駆けて提供している HCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)スタックに移行します。分散ストレージファブリックによる HCI の豊富なメリットが、コンピューティングから管理レイヤーに至るこれらの環境でシームレスに機能するようになります。
Nutanix® のソフトウェア定義アーキテクチャはパブリッククラウドに配置され、エンタープライズアプリケーションに必要なインフラの耐障害性と性能を提供します。これにより、あらゆるタイプのワークロードをパブリッククラウドに移行できます。
また、Nutanix の綿密な仮想ネットワークに対するアプローチにより、複雑なオーバーレイや時間のかかるインターネットワーキングアーキテクチャが不要になり、数回クリックするだけでプライベートクラウドとパブリッククラウドを統合できます。
これにより、パブリッククラウドインフラの構築プロセス全体が、劇的に簡素化されます。オンプレミス環境とのシンプルなネットワーク統合に続き、ホスティングインフラの構築もマウスを数回クリックするだけです。また、Nutanix の Intelligent Operations が統合されており、IT 管理者が定義した基準に基づいてインフラのバーストを自動化します。
オンプレミスで実行されている同じエンタープライズアプリケーションを、変更せずにパブリッククラウドで実行できます。最大の利点は、IT チームがネイティブに統合されているツールを使用して、アプリケーションをクラウドへ迅速に移行できることです。
さらに重要なことは、これらのワークロードをクラウド間で移動する機能がより魅力的になることです。例えば、あるお客さまは、パブリッククラウドをホスティングプロバイダとして使用し、アプリケーションのリファクタリングを必要とせずにワークロードを移行しました。
また、別のお客さまは、エンタープライズデータベースアプリケーションに必要な性能のために、予算を超過しコストを引き上げる高性能なストレージに傾倒する必要がありました。Nutanix の導入により、データベースアプリケーションをハイパースケーラーで動作する Nutanix にそのまま移行することで性能目標を達成し、コストを削減しました。
Nutanix は、3 層環境で動作する SAN でホストされているアプリケーションを、ワンクリックで Nutanix Cloud Platform™ ソリューションに移行できるようにします。移行先がオンプレミスのプライベートクラウド、サービスプロバイダのクラウド、パブリッククラウドのいずれであっても、ビジネスは IT やアプリケーションの制限に縛られることはありません。
AWS® や Microsoft Azure® のパブリッククラウドでネイティブに動作するアプリケーションについても同じことがいえます。Nutanix のお客さまの中には、アプリケーションをパブリッククラウドからオンプレミスに移行する方もいらっしゃいます。ワークロードの稼働率やリソース要件がより明確に理解されるようになると、常に最適なクラウドと場所を選択でき、市場の動向の変化に応じて再度変更できます。
ネイティブクラウドサービスの統合を検討する場合、ワークロードを移動するだけでは実現できません。多数のアプリケーションをクラウド向けにリファクタリングするには何年もかかる場合があり、その間、開発チームを技術的負債に相当する作業に縛り付けるのは、現実的ではありません。
パブリッククラウドへのアプリケーションの移行は、リフト & シフトとも呼ばれるアプリケーションのリホスティングを使用して、迅速かつ容易に実現できます。クラウドに移行すると、IT 開発チームは、同じ時間的制約を受けることなく、必要に応じてアプリケーションを自由に修正できます。
また、アプリケーションは、既にクラウドネイティブアプリケーションと同じ VPC(仮想プライベートクラウド)で実行されているため、はるかにシンプルなプロセスです。アプリケーション間の接続が最速かつ最低のレイテンシで提供されるため、リファクタリングプロセスは、他の方法で考えられていたよりも軽量になることさえあります。
このアプリケーション移行アプローチにより、開発チームは最終的に、最初からクラウドネイティブアプリケーションとして設計された主要なプロジェクトに集中できます。つまり、ビジネスの収益を生み出す新しいビジネスイニシアチブを推進できます。
クラウドネイティブサービスの統合が目的でない場合は、アプリケーションのリファクタリングにはほとんど価値はありません。お話を伺ったあるお客さまは、収益を生み出すアプリケーションにのみパブリッククラウドを使用しており、パブリッククラウドの支出から継続的な ROI を確保し、オーバーランを回避しています。
アプリケーションをクラウドに移行するその他の理由には、正当化が必要かもしれません。例えば、これらのアプリケーションには、豊富なハイパースケーラーのクラウドネイティブサービスやクラウドの弾力性が必要でしょうか。こういった質問に答えることで、適切なワークロードを適切な価格、性能、レジリエンスで実行する根拠が、常に厳しい予算内で監視され、制御されます。
Nutanix のアプリケーションモビリティの主なメリットは、オンプレミスのプライベートクラウドとパブリッククラウド環境の間でのライセンスポータビリティです。場所に縛られることなく、クラウドプラットフォームレイヤーを選択できます。前述したデータベースのお客さまは、そのワークロードを Microsoft Azure に移行することを検討できます。SQL Server® のライセンス料金の方がはるかに費用対効果が高く、コストを削減できる可能性があります。
Gartner® のアナリストである Henrique Cecci 氏と David Cappuccio 氏は、「2022 年までに行われたワークロード配置の 85% が、2027 年までに最適ではなくなる」と述べ*、アプリケーションのモビリティとポータビリティに対するニーズの高まりを強調しています。
Nutanix Cloud Platform™ ソリューションに備わっているポータビリティにより、アプリケーションを修正することなく迅速かつシンプルに選択したクラウドに移行でき、グリーンとサステナビリティの認証を強化できます。この運用モデルにより、ハイブリッド・マルチクラウド環境全体が統合され、あらゆる規模であらゆるアプリケーションを実行できるようになります。
クラウドとデジタルトランスフォーメーションの目標を理解し、アプリケーションモビリティのオプションを検討することは、移行プロジェクトを成功させるための第一歩です。Nutanix では、さまざまなオプションを明確かつ簡潔に見積もる TCO ツールを提供しており、特定の移行プロセスを選択する前に、ワークロードをパブリッククラウドに移行するためにかかるコストと時間を把握できます。
クラウドの目標を達成するために Nutanix がどのようにお手伝いできるのかについての詳細や、クラウド TCO に関する議論については、Nutanix の担当者にお問い合わせいただくか、こちらのハイブリッド・マルチクラウドのソリューションページをご覧ください。
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*「Workload Placement in Hybrid IT — Making Great Decisions About What, Where, When and Why」、Henrique Cecci 、David Cappuccio 共著、 Gartner、2022年5月2日
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