スポットライト:データベースの移行がハイブリッド・マルチクラウドソリューションのデプロイメントを後押し

データベースワークロードは、最も高頻度にエンタープライズの環境内を移動するワークロードの 1 つである。このようなミッションクリティカルなワークロードは、多くの場合、移行やモダナイズにおいて高いコストがかかり、極めて複雑なプロセスを必要とする。実際に、プライベート、パブリック、エッジの各環境にまたがるデータベースの管理は、データベース管理に関して最上位の課題の 1 つに挙げられている。

データベースを管理するうえでの主要課題

46

プライベート、パブリック、エッジの各環境をまたぐデータベースの管理

46

増加を続けるデータベースの管理

44

大規模なデータベースの管理

43

モダンアプリケーション開発のサポート

40

データベースのパッチ適用とアップグレードの作業

38

オープンソースデータベースの管理

35

データベースのプロビジョニング

この課題の存在にもかかわらず、データベースのモダナイゼーションや移行に取り組むエンタープライズの数は増加し続けている。ただし、データベースはアプリケーションのニーズを満たすためにオンプレミスやクラウドを含む複数の環境間で複製、コピーされるため、多くの組織はデータ管理の複雑さと運用のサイロ化に直面している。このような現実を見ると、増え続けるデータベースの管理が ECI 調査の回答中 2 番目に多い課題になったことは驚きではない。

組織は、データベースが置かれた環境(オンプレミス、クラウド、エッジなど)に関係なくデータベースのプロビジョニング、バックアップ、パッチ適用/アップデート、コピー管理などの運用を支援する共通のコントロールプレーンを採用することで、これらの課題に対応できるようになる。最も重要なことは、異なる IT 環境間で統合的なサービスを提供するとともに、異なる複数のデータベースベンダーをサポートするソリューションを探すことである。この手法は、組織が直面しているデータベース管理における上位 2 つの課題の解決に役立つ。

スポットライト:2024 年における経営幹部の IT 最優先事項

IT リーダーの 2024 年における優先事項の第 1 位は、データセキュリティの確保とランサムウェアからの保護であるが、これは驚くべきことではない。ランサムウェア攻撃とデータ損失/ダウンタイムイベントは、大企業が否定的な報道にさらされる主な原因である。経営陣や IT リーダーにとって、こうした事態はキャリアを左右するほどの影響を及ぼすリスクがあり、攻撃やデータ損失の防止や緩和が常に最優先事項であることは必然ともいえる。

回答者が考える自社の CIO、CTO を含む経営陣にとっての最優先事項

  • 1:データセキュリティとランサムウェア対策
  • 2:適切なハイブリッド IT 運用の導入
  • 3:AI 戦略の導入
  • 4:運用の最適化
  • 5:アプリケーション開発の加速
  • 6:コストの最小化
  • 7:サステナビリティ

適切なハイブリッド IT 運用の導入が優先事項の 2 位に位置付けされたのは、IT リーダーが常に自社のデータセンターや、さまざまなクラウドプラットフォームのインフラのデプロイメントや管理のための新たな方法の提案を求められていることが背景にあると考えられる。現在、ハイブリッドインフラに導入可能なソフトウェアやサービスは多岐にわたっている。IT リーダーは、これらのソリューションの運用をインフラ非依存の運用にすることで、クラウドを利用したさまざまなデータセンターやサービス間でアプリケーションとデータをシームレスに実行できるようにする必要がある。

経営陣の優先事項の第 3 位は、AI 戦略の導入である。2023 年における AI ツールやサービスへのメディアの注目度と商業的な利用可能性への期待が、AI 技術に対するエンタープライズの関心を新たな高みに押し上げている。この誇大な宣伝の効果は、2024 年も引き続き経営リーダーの意思決定に影響を与えると予測される。AI テクノロジーと関連ソリューションの進化および、IT インフラの傾向への影響については、Nutanix レポート「エンタープライズ AI の現状」で詳しく解説している。

経営幹部からの回答結果を詳しく分析することで、次のようなことが明らかになった。

89% の経営幹部の回答者が、クラウド全体にわたって全てのアプリケーションとデータを実行・管理する単一のプラットフォームを持つことが組織にとって理想であることに同意している(意思決定者よりも 6 ポイント高い)。

81% の経営幹部の回答者が、2024 年にエンジニアリングスタッフの採用、維持、育成のための投資が増加すると回答している(意思決定者よりも 14 ポイント高い)。

ランサムウェア対策に加え、データプライバシーも経営リーダーの注目度が高い領域である。経営幹部の回答では、自社が直面するデータ管理の課題としてデータプライバシーが 1 位にランクされた(ランサムウェア対策は 2 位)。

91% の経営幹部の回答者が、サステナビリティが組織にとって優先事項であることに同意している(意思決定者よりも 4 ポイント高い)。

2024 年における経営幹部の IT 最優先事項

#1

データセキュリティとランサムウェア対策

#2

適切なハイブリッド IT 運用の導入

#3

AI 戦略の導入

過去 1 年間に自社が注力したサステナビリティへの取り組み(地域別)

IT インフラのモダナイズによるサステナビリティの向上

廃棄物(有害汚染物質、化学物質、紙など)削減のための具体的な対策の強化

環境規制へのコンプライアンスを改善

温室効果ガス排出量とカーボンフットプリントをモニタリングする能力の向上

テクノロジーを活用したリモートワークの導入による従業員の通勤に伴う環境への負荷の軽減

再生可能エネルギーの利用の増大

2050 年までにカーボンニュートラルを達成するための取り組み

Americas

EMEA

APJ

図 10:過去 1 年間に自社が注力したサステナビリティへの取り組み(地域別)

ランサムウェア攻撃からのリカバリ:ランサムウェア攻撃からのリカバリの状況を地域別に見ると、復旧までの時間の分布は地域間で比較的共通しているが、数時間以内に復旧できた組織の割合と数日以内に復旧できた組織の割合には地域間で若干の違いがある。数時間以内に復旧できたと答えた回答者の割合は、APJ が最も高かった(図 11 参照)。EMEA の回答者の 14% が、過去 3 年間に自社でランサムウェア攻撃を受けたことがないと回答している点は興味深い。これは、Americas と APJ の両方の回答者から得られた 9% と比べるとかなり高い数字である。

ランサムウェア攻撃からの復旧に要した時間(地域別)

数時間で業務活動を完全に再開

数日で業務活動を完全に再開

数週間で業務活動を完全に再開

数時間で大部分の業務活動を再開したが、攻撃の影響は数週間以上継続した

数日で大部分の業務活動を再開したが、攻撃の影響は数週間以上継続した

Americas

EMEA

APJ

図 11:ランサムウェア攻撃からの復旧に要した時間(地域別)

データ管理:「ランサムウェア対策とデータセキュリティ」は、Americas と APJ において、世界平均と同様にデータ管理の最大の課題のトップに挙げられている。ただし、EMEA はこの傾向から外れており、「データプライバシー」と「データの保管と使用に関する規制(GDPR など)への準拠」がそれぞれ 1 位と 2 位にランクインし、「ランサムウェア対策とデータセキュリティ」は 3 位になった。データ管理の課題のなかでも「コスト」は、全地域で最下位になった(図 12 参照)。

データ管理の最大の課題(地域別)

ランサムウェア対策とデータセキュリティ

データの保管と使用に関する規制(GDPR など)への準拠

データプライバシー

複数環境のデータの関連付け

データの所在地に対する可視性の欠如

コスト

Americas

EMEA

APJ

図 12:データ管理の最大の課題(地域別)