IT リーダーの 2024 年における優先事項の第 1 位は、データセキュリティの確保とランサムウェアからの保護であるが、これは驚くべきことではない。ランサムウェア攻撃とデータ損失/ダウンタイムイベントは、大企業が否定的な報道にさらされる主な原因である。経営陣や IT リーダーにとって、こうした事態はキャリアを左右するほどの影響を及ぼすリスクがあり、攻撃やデータ損失の防止や緩和が常に最優先事項であることは必然ともいえる。
回答者が考える自社の CIO、CTO を含む経営陣にとっての最優先事項
適切なハイブリッド IT 運用の導入が優先事項の 2 位に位置付けされたのは、IT リーダーが常に自社のデータセンターや、さまざまなクラウドプラットフォームのインフラのデプロイメントや管理のための新たな方法の提案を求められていることが背景にあると考えられる。現在、ハイブリッドインフラに導入可能なソフトウェアやサービスは多岐にわたっている。IT リーダーは、これらのソリューションの運用をインフラ非依存の運用にすることで、クラウドを利用したさまざまなデータセンターやサービス間でアプリケーションとデータをシームレスに実行できるようにする必要がある。
経営陣の優先事項の第 3 位は、AI 戦略の導入である。2023 年における AI ツールやサービスへのメディアの注目度と商業的な利用可能性への期待が、AI 技術に対するエンタープライズの関心を新たな高みに押し上げている。この誇大な宣伝の効果は、2024 年も引き続き経営リーダーの意思決定に影響を与えると予測される。AI テクノロジーと関連ソリューションの進化および、IT インフラの傾向への影響については、Nutanix レポート「エンタープライズ AI の現状」で詳しく解説している。
経営幹部からの回答結果を詳しく分析することで、次のようなことが明らかになった。
89% の経営幹部の回答者が、クラウド全体にわたって全てのアプリケーションとデータを実行・管理する単一のプラットフォームを持つことが組織にとって理想であることに同意している(意思決定者よりも 6 ポイント高い)。
81% の経営幹部の回答者が、2024 年にエンジニアリングスタッフの採用、維持、育成のための投資が増加すると回答している(意思決定者よりも 14 ポイント高い)。
ランサムウェア対策に加え、データプライバシーも経営リーダーの注目度が高い領域である。経営幹部の回答では、自社が直面するデータ管理の課題としてデータプライバシーが 1 位にランクされた(ランサムウェア対策は 2 位)。
91% の経営幹部の回答者が、サステナビリティが組織にとって優先事項であることに同意している(意思決定者よりも 4 ポイント高い)。
データセキュリティとランサムウェア対策
適切なハイブリッド IT 運用の導入
AI 戦略の導入
コンテナ化とは、1 つのオペレーティングシステムを仮想的に実行するのに必要な全ての要素を含むソフトウェアをパッケージ化する技術である。この技術によって、プライベートデータセンター、パブリッククラウド、または個人のノートパソコンなど、どこからでもオペレーティングシステムを実行できるようになる。コンテナ化は、ハイブリッド・マルチクラウド戦略の中核的な原則とみなすこともできる。
コンテナを利用するエンタープライズでは、多くの場合、クラウドネイティブアプリケーションを構築する際に、コンテナ化されたアプリケーションを管理するために、コンテナオーケストレーションを可能にするプラットフォームやサービスも活用している。コンテナオーケストレーションには、コンテナのデプロイメント、ネットワーキング、スケーリング、管理を自動化するためのプロセスが含まれる。現在利用されているコンテナオーケストレーションプラットフォームの代表格が Kubernetes である。オープンソースのプラットフォームである Kubernetes は、昨今の多くのエンタープライズ向けコンテナオーケストレーションのプラットフォームやマネージドサービスの基礎になっている。
2024 年の ECI 調査結果は、アプリケーションのコンテナ化の普及を示しており、97% の回答者が、自社のアプリケーション資産のうち、ある程度の割合がコンテナ化されていると回答している。
全てのアプリケーションがコンテナ化されている
50% 以上がコンテナ化されている
50% 未満がコンテナ化されている
コンテナ化されているアプリケーションはない
企業規模:アプリケーションの半分以上がコンテナ化されていると回答した大規模エンタープライズ(従業員 5,000 人以上)はわずか 48%で、市場全体の平均を 10 ポイント下回っている。
地域:APJ の回答者の 62% は、アプリケーションの半分以上がコンテナ化されていると回答。これは世界平均をわずかに上回り、EMEA や Americas と比較して上回っている。
業種:連邦/中央政府機関の回答者の 12% が、コンテナ化されているアプリケーションはないと回答しており、この割合は全業種の中で最も高い。
IT インフラのモダナイズによるサステナビリティの向上
廃棄物(有害汚染物質、化学物質、紙など)削減のための具体的な対策の強化
環境規制へのコンプライアンスを改善
温室効果ガス排出量とカーボンフットプリントをモニタリングする能力の向上
テクノロジーを活用したリモートワークの導入による従業員の通勤に伴う環境への負荷の軽減
再生可能エネルギーの利用の増大
2050 年までにカーボンニュートラルを達成するための取り組み
Americas
EMEA
APJ
図 10:過去 1 年間に自社が注力したサステナビリティへの取り組み(地域別)
ランサムウェア攻撃からのリカバリ:ランサムウェア攻撃からのリカバリの状況を地域別に見ると、復旧までの時間の分布は地域間で比較的共通しているが、数時間以内に復旧できた組織の割合と数日以内に復旧できた組織の割合には地域間で若干の違いがある。数時間以内に復旧できたと答えた回答者の割合は、APJ が最も高かった(図 11 参照)。EMEA の回答者の 14% が、過去 3 年間に自社でランサムウェア攻撃を受けたことがないと回答している点は興味深い。これは、Americas と APJ の両方の回答者から得られた 9% と比べるとかなり高い数字である。
数時間で業務活動を完全に再開
数日で業務活動を完全に再開
数週間で業務活動を完全に再開
数時間で大部分の業務活動を再開したが、攻撃の影響は数週間以上継続した
数日で大部分の業務活動を再開したが、攻撃の影響は数週間以上継続した
Americas
EMEA
APJ
図 11:ランサムウェア攻撃からの復旧に要した時間(地域別)
データ管理:「ランサムウェア対策とデータセキュリティ」は、Americas と APJ において、世界平均と同様にデータ管理の最大の課題のトップに挙げられている。ただし、EMEA はこの傾向から外れており、「データプライバシー」と「データの保管と使用に関する規制(GDPR など)への準拠」がそれぞれ 1 位と 2 位にランクインし、「ランサムウェア対策とデータセキュリティ」は 3 位になった。データ管理の課題のなかでも「コスト」は、全地域で最下位になった(図 12 参照)。